原子力に頼らないエネルギー政策を考える(1) 水素エネルギー
トヨタ自動車による燃料電池車の発表以降、水素エネルギーに関するニュースが続々と飛び込んできた。
トヨタ自動車は5日、水素で走る燃料電池車(FCV※)の普及を促すため、世界で保有するFCV関連の特許約5680件を全て無償提供すると発表した。
1社だけの努力では普及は難しいとして異例の特許開放に踏み切る。一部を除き、2020年までの期限付きとして、それまでに世界で1万台の普及を目指す。
驚きなのは新型トヨタ ミライの価格だ。車両価格は、税込で7,236,000円。価格的に見れば、メルセデス・ベンツEクラスなどの輸入高級車の価格帯で安くはない。ただ、10年くらい前までは1台当り数億円と言われていた燃料電池車だ。そんな世界最先端の技術を搭載したクルマが、今では7,236,000円で買えるという現実にも驚愕だ。
<中略>
赤字覚悟とも言われている状態だ。どんな優れた技術も一般に使われなければ意味がない。とくに、環境車は普及こそ環境に貢献する。そのため、ミライはこの価格になったとみられている。
そんなトヨタの心意気を汲んだのか、国も燃料電池車の購入について手厚くサポートする。燃料電池車の技術が、今後、日本が世界をリードする可能性が高いということもある。まず、国から約200万円/台が補助され、500万円程度で購入が可能になる。これに、地方自治体の補助金が加わり、400万円台くらいが顧客負担とも言われ、イッキに普及させる土台作りが進んでいる。400万円といえば、クラウンくらいの価格帯だ。
トヨタミライ こうした価格訴求もあり、ミライの注文が殺到。2015年末までの生産台数が400台ということもあり、すでに数年待ちという状態になったという。
補助金で400万円くらいとなっているが、国の戦略部門として一気に水素を普及させるため、補助金込みで298万円までしていいと思う。
すでに納車まで数年待ちという事なので、その間に国を挙げて水素ステーションの建設を促進し、水素自動車が普及しても困らない状況にしておくべきだ。
ここでも、お金を使うがアベノミクス第二の矢と称して無駄な公共事業を乱発してお金をばら撒くよりも、よっぽど将来の経済成長に繋がる。
JX日鉱日石エネルギーが運用を開始したのは「Dr.Drive海老名中央店」(神奈川県海老名市中新田、図1)。他社も含めると国内で4つ目の水素ステーションとなる形だ*2)。「ガソリン車への給油や車のメンテナンス施設を備えたサービスステーション一体型として、国内初の水素ステーションである」
ホンダと岩谷産業は2014年9月18日、水素製造から充填システムまで構成部位を世界で初めてパッケージ化した小型水素ステーション「スマート水素ステーション」を開発し、さいたま市に設置した。
1基当たりの設置コストが約4億~5億円かかるとされるこれまでの水素ステーションに比べて、「設置コストを将来的に10分の1まで減らすことを目指す」(ホンダ)としており、両社は水素ステーションの普及を加速させる考え。ホンダは、2015年に燃料電池自動車(FCV)を発売する計画で、FCV普及の基盤整備につなげたいとしている。
水素は燃料電池車への利用だけでなく、水素を利用した発電に大きな魅力がある。原発よりも安全で安価な物となるだろう。発電と言うと巨大な設備を思い浮かべるかもしれないが、原発と違い水素発電は小型化が可能である。最終的には一家で一台の水素発電機を設置する事も可能だろう。
本格的な水素社会を実現するには、水素の需要量を飛躍的に拡大させるような新たな利用技術の確立が重要になる。白書では、家庭用燃料電池と燃料電池自動車に次ぐ第3の柱として、ガスタービンなどの燃料として水素を利用する水素発電技術が有望とした。水素エネルギー全体の国内の市場規模は、2030年に1兆円、2050年に8兆円になるという。
ロードマップは、燃料電池などを活用した水素利活用技術の導入を3段階に分け、それぞれの目標を設定したもの。
2025年頃までのフェーズ1は「水素利用の飛躍的な拡大期」と位置付けた。家庭用燃料電池の普及目標を2020年に140万台、2030年に530万台、燃料電池自動車向けの水素供給スタンドを2015年に100カ所と設定した。
<中略>
2020年代半ばから2030年頃のフェーズ2は「水素発電の本格導入と大規模な水素供給システムの確立期」と位置付けた。海外からの水素価格30円/m3程度、商業ベースでの国内での水素流通網拡大、海外での未利用エネルギー由来の水素製造・輸送・貯蔵の本格化、発電事業用の水素発電の本格化などを目標に掲げた。
2040年頃からのフェーズ3は「トータルでの二酸化炭素(CO2)フリー水素供給システムの確立期」と位置付けた。CO2の回収・貯留(CCS)や国内外の再生可能エネルギーとの組み合わせによるCO2を排出しない水素の製造・輸送・貯蔵の本格化を目標に設定した。
セブン―イレブン・ジャパンと岩谷産業は10日、燃料電池車(FCV)に燃料を供給する水素ステーションを併設したコンビニエンスストアを、2015年秋から出店すると発表した。東京都と愛知県刈谷市に1店ずつ出し、17年度までに大阪や福岡も含めた大都市圏を中心に20店に増やすという。
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水素を販売するだけでなく、店内の電力にも燃料電池を活用し、環境負荷をどれくらい抑えられるかの実証実験を行う。将来的には、水素ステーションのない店舗でも、燃料電池を使う可能性があるという。
経済産業相が設置した水素・燃料電池戦略協議会(座長・柏木孝夫東京工業大学特命教授)は水素を燃料電池自動車や発電などで活用する「水素社会」への期待が膨らんでいる。燃やしても二酸化炭素(CO2)を出さない水素は究極のクリーン燃料とされるが、輸送や貯蔵にコストがかかり、当面は大都市での利用にとどまるとの見方が多い。最近、間伐材などバイオマス(生物資源)から水素を効率よくつくる技術が登場。地方都市などでエネルギーの“地産地消”を実現する有力手段になるかもしれない。
燃焼しても二酸化炭素(CO2)を排出しない水素をエネルギー源として大規模に活用する、「水素社会」の実現を目指すプロジェクトが世界各地でスタートしている(図1)。水素インフラ関連の市場規模は、2050年には年間160兆円に上ると見られる